令和4年度 農福連携事業のご報告(4月~12月)

1.農福連携障がい者チャレンジ事業

【概要】

施設外就労の形態を通して農作業実習を行うことで、受入れ事業主の負担軽減を図り、施設外就労および障がい者に対する理解を深めるとともに実施事業所支援員の農作業指導力および障がい者の農作業能力の向上を図ることを目的とし実施する。

【取組事例】

発注事業所・団体取組事業所数内容
1(合)アグリ米ブリッジ1事業所育苗箱洗浄・消毒
2イチゴ農家1事業所株片付け・株整理
3ぶどう農家4戸11事業所傘掛け、袋掛け、副梢切り
4ミニトマト農家1事業所下葉かき、箱折り
5ぶどう農家4戸1事業所袋掛け
6白ネギ農家2事業所除草
7NPO法人益田自立支援センター1事業所唐辛子収穫、房分け、もぎ取り
8ぶどう農家1事業所剪定枝片付け
9JAしまね平田柿部会1事業所出荷箱詰め
10柿農家3事業所柿剪定枝片付け
水稲育苗箱洗浄
【水稲育苗箱洗浄】
白ネギ畑除草
【白ネギ畑除草】
ミニトマト作業前説明
【ミニトマト作業前説明】
柿剪定枝片付け
【柿剪定枝片付け】

2.出雲圏域農福連携推進事業

【概要】

農福連携の浸透により農家側から農作業委託希望が増加しているが、受託できる福祉事業所が少なく受託し切れていない。このため、県内農産物の主要産地であり、また農業の取組事業所の多い出雲圏域をモデル地区として、農業と福祉の分野でそれぞれが抱える課題に対して、施設外就労による農業と福祉の連携を推進することで課題解決につなげ、農福連携事業の効果拡大と恒久的な体制を打ち出すことにより、産地品目の生産振興と農村活性化に資することを目的として、平成29年度と30年度の2カ年実施した。事業終了後は事業内容(4)の支援体制構築を目指し、情報交換の場として継続して推進協議会を開催している。

【事業内容】

(1)農作業の施設外就労の促進を図るため、農作業施設外就労促進事業の実施
(2)福祉事業所職員、障がい者の農業技術向上研修
(3)農福連携事業について事例発表、情報交換会および受委託費算定研修
(4)農業と福祉のマッチングを図る継続的な支援体制構築
※この事業は平成29年~30年に農林水産省の「農山漁村振興交付金(農福連携対策)」を活用して実施

【出雲圏域農福連携推進協議会】

日 時 令和4年6月17(金)
場 所 島根県出雲合同庁舎701会議室
参加人数 19名
内 容 出雲圏域での農作業の施設外就労の継続化対策、出雲圏域の現状と課題の共有化、農福連携支援事業の紹介

【令和4年度の主要活動項目】

①ぶどう栽培施設外就労での福祉事業所の共同作業

下記写真のようにA・B・C計3つの福祉事業所が作業エリアを分担して共同で袋掛けを実施。

A,B,C3つの福祉事業所が作業エリアを分担して共同で袋掛け作業を実施

<評価>

  • 1週間単位での受託ハウス数は増加し、今シーズンの農家からの袋掛け要望に全て応えることができた。
  • 新規事業所、作業可能な利用者が少ない事業所にとっては、袋掛け作業を受託する負担感が軽減し参加しやすかった。

②JAしまね農産物集出荷調整施設での施設外就労の可能性検討

(1)JAしまね出雲地区本部平田柿選果場での箱詰め作業

<評価>

  • 10~12月初旬にかけて原則、火・木曜日に1事業所が実施。作業は問題なく行われパートさんからも助かったとの声を聞く。また、指示通りの正確な並べ方を高く評価された。
  • 当初、障がい者の受け入れについてパートさんの間で若干戸惑う様子もあったが、障がい者の作業ぶりを見て接することですぐに解消された。
  • 障がい者のスキルアップの視点では、急に大きな音がしても冷静に取り組めたこと、コミュニケーション、作業時の報連相など団体作業でのスキル向上の機会になった。
規格別に箱詰めを担当。選果量が少ない時は他の規格の箱詰めも状況判断して行う

(2)JAしまね斐川玉葱広域調製施設での出荷調整作業

<評価>

  • 作業位置の高さ、選別判断基準、選別スピードの速さなどから、受託には至らなかった。
  • 次年度に向けて他の福祉事業所から前向きな意向が示され、作業工程を分解し可能性のある作業を再検討する予定。

3.益田市農福連携支援

【概要】

 益田市における農福連携を一層拡大するために、平成30 年度から関係機関、団体等との情報共有と検討が進められ、 令和 3 年 4 月に事業所、関係機関・団体で構成する「益田市施設外就労サポート組織」が設立され組織的対応が開始された。
 今年度は、水稲育苗箱洗浄、ぶどう袋掛け・花かす落とし・房下ろし、加工用ぶどう収穫、ケールマルチ剥ぎ等の施設外就労、デラウェア出荷調製の施設内就労が実施された。
 また、チャレンジ事業を活用したイチゴ作業、唐辛子収穫、ステップアップ事業を活用したミニトマト作業等、農業技術の習得を行うとともに、新規就農予定者や県外企業との相談・検討を実施し、次年度以降の取り組み拡大のための検討を開始した。

【説明会等】

日 時 内 容
令和4年4月13日 ぶどう栽培の施設外就労支援、新規事業説明
令和4年5月10日 アグリ米ブリッジ施設外就労説明会
令和4年5月25日 デラウェア出荷調整作業説明会
令和4年6月28日 JA西いわみ地区本部ミニトマト部会での農福連携の取組検討
 令和4年9月8日 ミニトマト作業現地説明と今後の対応の対応について
令和4年11月16日 県外企業との作業内容目合わせ会
令和4年11月17日 新規就農予定者相談会
 令和4年12月15日 新規就農予定者と事業所検討会
【デラウェア出荷調整(パック詰め)】
水稲作業説明会
【水稲作業説明会】
イチゴ作業打ち合わせ写真
【イチゴ作業打ち合わせ】

4.マッチング実績

【マッチング完了】

発注事業所・団体受注事業所数内容
1合同会社アグリ米ブリッジ1事業所育苗箱洗浄・消毒
2ぶどう農家8戸5事業所傘掛け、袋掛け、副梢切り、出荷調整、剪定枝片付け
3白ネギ農家2事業所除草
4JAしまね平田柿部会2事業所出荷箱詰め、化粧箱折り
5柿農家3事業所柿剪定枝片付け
6ぶどう農家1事業所デラウェア房おろし・花かす落とし
7ぶどう農家1事業所デラウェア房おろし・花かす落とし
8有限会社大場ぶどうファーム3事業所デラウェア出荷調製,ぶどう袋掛け
9キューサイファーム島根3事業所ケール収穫、ケールマルチ剥ぎ、ケール補植
10畜産農家1事業所玉ねぎ収穫・出荷調整
11JAしまねくにびき地区本部1事業所干し柿化粧箱折り
12農事組合法人意宇の杜1事業所水稲育苗箱洗浄
13JAしまねいわみ中央地区本部2事業所干し柿製造

5.相談案件

相談内容対応
1松江養護学校乃木校舎から高等部学生の現場実習受け入れ農家先の紹介について島根県東部農林水産振興センター松江農業部に照会し、適当な受け入れ農家を紹介してもらい、現場実習を実施。
2出雲養護学校高等部から、農業分野での地域連携について同校担当者との検討を重ね、ぶどう栽培技術向上研修会への参加を紹介し教諭2名が参加。同校圃場の有効活用や農家研修など、具現化に向けた検討は継続実施中。
3光風園の相談支援員から、障がい者の福祉事業所を利用しない就農事例や受け入れ先等について農作業体験から始め、本人の意向を確認することが大切であることを説明し、光風園にて本人の意思を再確認することになった。そのうえで体験研修希望があれば対応予定。
4松江市から障がい者の就農について就労継続新事業所の活用を紹介。その後、松江市役所で本人との面談を重ねた結果、静観することになった。
5新規就農者(ブドウ栽培)への施設外就労説明施設外就労の仕組み、出雲市での事例を紹介。
6出雲農業部内研修での農福連携について説明島根県および出雲市内での農福連携の取り組み概要を説明
7松江農業部内研修での農福連携について説明島根県および出雲市内での農福連携の取り組み概要と農業普及活動について説明
8松江市内福祉事業所から施設外就労での作業工賃設定の考え方、契約書例について事例を紹介し基本的な考え方を説明。基本的な請負契約書例を紹介。
9出雲市内B型事業所から農作業での施設外就労の新規取り組みについて出雲市内での事例や具体的な依頼案件を紹介し、お試し体験からの取り組みを示唆
10(株)アウトソーシングビジネスサービスの特例子会社から県内農業情報収集対応県内福祉偉業所による農業生産活動の概要を説明。江津市内で事業所開設のことから、浜田農林水産振興センター農業部に浜田圏域の農業と主だった農業経営者の紹介を依頼。
11松江市内福祉事業所から農業の施設外就労で技術指導できる職員養成について将来的に職員確保として農林大学校への求人情報提供を紹介。直近対策として、農福連携サポーターの交代と継続支援について相談。
12松江市内高齢者通所介護サービス事業所から、B型事業所開設について農業者による就労支援開設事例を情報提供。開設後の施設外就労など具体案件に対する相談対応について説明
13大田市内における就労継続支援事業所の新設相談構想等の説明を受ける。今後、必要な時に相談に応じる予定。
14農福連携でのぶどう袋掛け用前掛け作成について作成可能な事業所に紹介し新商品開発事業活用を支援。現場ニーズや試作改善、販売対策などで関係機関と調整を行い支援中。
15島根あさひ社会復帰促進センターから農福連携の取り組みについて農福連携について協議
16松江刑務所からの農福連携の取り組みについて農福連携の概要、対象(刑務所・受刑者は対象ではない)等を説明。
17松江市内福祉事業所から、農福連携開始について相談農山漁村振興交付金等の調査・検討
18益田市新規就農予定者(イチゴ)相談作業実施が可能な事業所と相談開始
19県外事業所から益田市における作業委託について作業実施が可能な事業所と相談開始

6.ステップアップ事業

【概要】

 施設外就労の形態を通して一定期間作業実習を行うことで、障がい者の作業能力および職業能力向上に資するとともに、受入れ事業主の施設外就労および障がい者に対する理解を深め、実施事業所支援員の農作業指導力の向上と施設外就労の定着を推進することを目的とし、令和3年度から新規に実施。

【取組事例】

 発注事業所・団体取組事業所数内容
1JAしまね平田柿部会1事業所柿選果場での箱詰め
2ミニトマト農家1事業所下葉かき、収穫、選別・パック詰め
3JAしまねいわみ中央地区本部1事業所西条柿加工

7.農福連携サポーター制度

【目的】

 障がい者就労継続支援事業所へ農業指導を通して、農業技術・知識を向上させ、農業への取り組みに対する不安解消や生産を拡大することにより、利用者の工賃向上や障がいの改善を図る。
平成25年9月から実施。
令和4年度から、農作業請負力強化事業により施設外就労への派遣を可能とし、サポーターの増員に取り組んだ。

【農福連携サポーター登録】

 26名(新規8名)

【サポーター指導事業所】

 指導事業所:17事業所(新規:1事業所)
 指導回数:延べ154回

 事業所名主な指導品目/内容備考
1さくらの家農作物全般 
2わこうの里ぶどう
菌床しいたけ
 
3あけぼの作業所ブルーベリー 
4まがたま野菜 
5きすきの里野菜 
6美野園トマト等野菜 
7ワークケアはつらつ野菜 
8こころクラブ海陽堂野菜 
9つわぶきネット野菜 
10フルール益田水稲 
11仁万の里野菜・花苗 
12あゆみの里 就労支援事業所タマネギ・サツマイモ 
13さんさん牧場野菜 
14就労支援事業所だんだん菌床しいたけ 
15就労支援事業所 すばるぶどう 
16就労継続支援事業所ミライカ畑作物 
17いなほの郷西条柿(加工)新規

【利用実績】

利用実績利用実績利用実績
4月9事業所/17回8月7事業所/14回12月8事業所/16回
5月12事業所/27回9月8事業所/16回1月 
6月5事業所/17回10月6事業所/12回2月 
7月7事業所/18回11月8事業所/17回3月 

8.障がい者福祉事業所農作業請負力強化事業

【概要】

 障がい者福祉事業所が施設外就労による農作業を請け負いやすい環境を整えることで農作業の請負力を強化し農福連携を推進することを目的に、令和4年度新規事業として、「島根県障がい者福祉事業所農作業請負力強化事業」をセンター事業として実施。

【内容】

 助成金等活用事業所数内容
1就労の環境づくり支援助成金12事業所農作業請負に必要な物品等で、暑さ対策や利用者の障がい特性等に合わせて準備する農具等の購入を助成
2農作業請負奨励金2事業所農作業の施設外就労実績に応じて奨励金(利用者1人あたり1,000円/日)を支給
3専門家派遣1事業所新たに農作業を請け負うまたは新たな作物、作業を請け負う事業所に農作業を指導する農業専門家を派遣
利用回数:7回  サポーター:2名
4農福連携コーディネーターを配置出雲圏域におけるマッチング・研修・掘り起こし等を強化

9.研修

《9-1》農福連携推進研修会

日時令和4年8月30日
場所ビッグハート出雲 白のホール
内容・県内実践事例発表
出雲市内でぶどう栽培の施設外就労に取り組む受託福祉事業所と委託農家かそれぞれの立場から、効果と課題を紹介
・基調講演
浜松市内の農業法人等7農業経営体と周年で施設外就労を行う特例子会社から、委託法人等との信頼関係構築のポイントや利用者のスキル向上対策と指導面の工夫、施設外就労の
・島根県の農福連携に関する施策概要について紹介
・島根県内で特徴のある農福連携6事例をパネル展示で紹介
開催趣旨施設外就労は小規模な障がい者就労支援事業所でも比較的取り組みやすい方法で、また農家からの期待も大きい。そして、実践事例の中には、福祉側では障がい者の社会参画、農業側では経営改善に結びついた事例も見受けられる。そこで、実践事例を通じて福祉と農業の両面から農業での施設外就労の可能性について考え、さらなる取り組みを推進する。
参加人数59名(農家、福祉事業所、県市町担当、JA担当)

《9-2》施設外就労作業効率向上研修

【開催趣旨】

ぶどう栽培(主にシャインマスカット)での施設外就労等に取り組む障がい福祉事業所(以下、事業所)の作業スキル向上を目的に、指導職員等を対象に、栽培の基礎知識(成長と管理ポイント)と基本的な作業方法を習得するとともに指導方法の向上を図る。
9月から3月まで作業テーマ別の講座開催とするとともに、各事業所において受講を希望する利用者の参加も可能とする。

【場所・日時等】

<1回目>

日  時令和4年9月30日(金)
場  所出雲市下横町 山本孝司氏(講師)ハウス
参加人数4事業所9名、農福連携サポーター3名、関係機関職員3名 計15名
内  容

・講義:生育ステージと主な管理の流れ 、副梢切りの意義と注意点
・実習:副梢の見極めと切り方
・意見交換:副梢切の指導方法について

第1回 講義の様子写真
【現地講義】
副梢見極め、指導方法の実習写真
【実習】

<2回目>

日  時令和4年12月2日(金)
場  所出雲市浜町 山本孝司氏(講師)ハウス
参加人数4事業所7名、農福連携サポーター3名、関係機関職員2名 計12名
内  容

・講義:シャインマスカットの剪定について
・実習: 短梢剪定の基本技術
・意見交換:剪定の指導方法について

第2回 講義の様子写真
【現地講義】
実習で短梢剪定の実習写真
【実習】

《9-3》刈払機取扱作業者に対する安全衛生教育

日  時令和4 年 10 月 2 1日(金) 9:30 ~16:30
場  所島根県立農林大学校
内  容刈払機に関する整備や点検などの知識や集団で作業する場合の安全な運用方法、振動障害や応急手当の知識など座学を5時間、実際に刈払機を使用した実技を1時間と計6時間の講習を実施し、安全で効率的な使い方を学ぶ。
開催趣旨官公庁から道路維持委託業務や河川維持委託業務等を請け負う場合、刈払機取扱作業者安全衛生教育の修了資格が必要であり、障がい者福祉就労系の事業所でも受託実績の多い案件であることから平成 27 年度から継続的に実施。
期待される効果しっかりとした知識と技量に裏付けされた仕事をすることで、除草作業の安全性の確保と、信頼性及び受注力の向上に繋げる。
参加 人数14事業所28名(うち利用者11名)
講義の様子写真
【講義】
演習の様子
【演習】

10.トマトミックスソース 連携

【概要】

障害者支援施設太陽の里のトマトミックスソースの生産拡大に向けて、福祉事業所同士が連携して 平成 26 年度から本格的に取り組んでいる。美野園、就労支援事業所しゃぼん玉工房、きすきの里が原料となる加工用トマトを生産し 障害者支援施設太陽の里に供給、 平成 27 年度 からは一次加工をなかよしが担っている。連携により、それまでの生産量が2~3 倍に拡大し原料となるトマトの安定確保、トマトミックスソース製造量増加につながり、令和3年からは新商品としてトマトソースの生産販売も始まり、福祉事業所間連携によるこの活動も拡充している 。

【技術指導】

土壌分析による施肥設計や病害虫・生理障害による生育異常について農業技術 センター 、JAしまね斐川地区本部の協力を得ながら指導を行う。青枯れ病、葉カビ病の発生、夏季高温による尻腐れの発生により一部ほ場では減収したが、全体では概ね計画以上の加工用トマト生産量となった。そのため、収穫盛期には冷蔵庫が満杯状態となり、加工製造が多忙となり、事業所間の情報共有を促した。

11.農福マルシェ

しふく&農福マルシェ in 安来プラーナ

参加事業所8事業所
日  時令和4年9月14日(水)10:00~14:00
取組概要安来プラーナで共同販売会のしふくのマルシェと農福マルシェを共同開催。
売  上184,310円
販売の様子写真1
【販売の様子】
農福連携PRコーナー写真
【農福連携PRコーナー】