【事例3】社会福祉法人喜和会 障害者支援施設 太陽の里(出雲市)

斐川町農業の担い手として活躍

平成24年に農業を基本とした就労支援に変更。農地中間管理事業を活用し斐川町内の水田・畑を集積。出雲市の振興作物の玉ねぎ、キャベツ、白ネギの栽培に取り組み、その栽培面積は斐川町内でもトップクラスである。また、地域伝統野菜の出西ショウガ、福福連携による加工トマトの栽培・加工・販売、味噌等の農産加工にも取り組む。さらに、「せわやき隊」を組織し、斐川町内の農家から農作業を受託し、地域農業の担い手として活躍する。こうした活動が認められ、令和2年に、「ノウフク・アワード2020」優秀賞、中国四国農政局「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」奨励賞を受賞した。

1. 障害者支援施設 太陽の里 概要

  • 所在地  :出雲市斐川町名島90番地
  • 定員と現状:施設入所支援30名、生活介護40名、就労継続支援B型40名、共同生活援助30名、短期入所2名

2.主な農作業

1) 農業生産

  • JA共販品目の玉ねぎ、キャベツ、白ネギを栽培することで、大量な生産量の販路を確保するとともに、JAから指導を受けて栽培技術の向上に励む。さらに、地域の伝統作物の出西生姜栽培など伝統技術を守り、地域とのつながりを大切にしている。
  • 効率化すべき作業は機械導入するが、効率化だけでなく、利用者の仕事を作ることも大切なので、例えば玉ねぎは、玉吊り乾燥貯蔵して継続出荷している。

図1 主な野菜の作付けと農産加工

図2 タマネギ収穫

【図2 タマネギ収穫】

2) 農産加工

  • トマトを原料としたソース類は、事業所及び町内産の原材料をふんだんに使用し、じっくり時間をかけて煮込み丁寧に製造している。地元の道の駅ほかで販売。
  • トマトソースは、令和3年から販売。女性スタッフが幅広い料理に使えるソースとして商品化した。トマトと玉ねぎをたっぷり使用し、出西生姜も入る。野菜の旨味と甘味を生かしたソース。
  • トマトミックスソースは、出雲市、雲南市の4つの福祉事業所と栽培から加工販売まで連携(福福連携)。
  • 味噌は、町内産の米、大豆を使用。
  • 焼き肉のたれは、事業所で栽培、製造した玉ねぎ、にんにく、出西生姜、味噌をふんだんに使用。
図3 左から味噌、焼き肉のたれ、トマトソース、 トマトミックスソース

【図3 左から味噌、焼き肉のたれ トマトソース、 トマトミックスソース】

3) 施設外就労 (せわやき隊)

町内の農家から、堆肥散布や、除草などを請け負う。特に、冬季の堆肥散布は、手作業ながら5haを超えるほどである。
※機械化は利用者の仕事を奪うこともあるので非効率な面はあるが手作業を基本とする。
その分、丁寧な作業で作業の質を高める。また、最終的な手取り額を増やすように考えている。
機械導入に際しては、利用者、職員の健康面と作業効率を考え慎重に判断する。

図4 せわやき隊の堆肥散布

【図 4 せわやき隊の堆肥散布】

 

3.太陽の里 の評価

  • 農作業は利用者の適性に合うように作業工程を細分化することで得意分野ができ、幅広い年齢層の人が取り組めている。
  • せわやき隊の活動は、農家の作業だけでなく、大規模農家の手伝いや用水路掃除等も引き受けており、地域から支えられる立場の利用者が農業を行うことで地域に貢献できている。そして、地域の一員として一人一人が輝ける。
  • 農作業等に参加することで自信が生まれ、やりがいを感じている。また、施設外に出て仲間と共同で農作業することで体力やコミュニケーション力も高まる。農家等から認められ褒めてもらうことで意欲が高まり休む人はほとんどいない。家族との会話も増えた。
  • 農家には大変喜ばれており、活動を継続することにより福祉への理解が深まり、認められるようになった。
  • 受託件数は年々増加。工賃は、農業中心の作業でありながら県平均を上回っている。事業所の農業販売額も当初に比べ約50%増。
  • 野菜の栽培方法を覚えた利用者がグループホームで畑を作り、ホームの食事に野菜を提供している。
  • トマトミックスソース製造では、福祉事業間での福福連携という新しい連携も生まれた。
  • 農業機械施設整備費、修理費等の捻出も課題の一つ。

 

<資料>

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