農業者が就労支援事業所を設立~農福連携を基盤に利用者の夢をお手伝い~
益田市にIターン就農した豊田浩氏は、特別支援学校の農業体験を引き受けたことをきっかけに、自らが就農後苦労した経験から、障がい者が自らの夢を実現できるよう支援したいとの思いで、県内初となる農業経営者による就労支援事業所「フルール益田」を平成25年に設立した。豊田氏が経営する(農)とよた園芸場を核とした施設外就労に取り組む。また、草刈隊を組織して地域の水田畦畔の草刈も請け負い中山間地農業維興に貢献している。農業での就労支援サービスを通じて利用者がフルール益田の職員に、また、施設外就労で給餌を3年間続けた畜産農家に就職するなど、利用者の社会参画に繋がっている。さらに、両組織が協働事業体として機能し、地域高齢者サロンの運営や食育活動など地域コミュニティーを支える活動も胎動しつつある。
1.多機能型事業所フルール益田の概要
- 所在地 :益田市戸田町イ170番1
- 定員 :就労継続支援A型定員10名、登録者8名B型定員10名、登録者6名
- ホームページ:https://fleur-m.jp
【フルール益田QRコード】
- 組織形態 :ルール益田と(農)とよた園芸場とも豊田浩氏が代表を務める。フルール益田は農福連携を核に障がい者に福祉サービスを提供。とよた園芸場は農福連携の基盤となる農業事業を担う。両組織を一つ屋根の下で連携し協働して取り組むことで、農福連携をとおした地域とのつながりを深め、地域コミュニティー活動を支えつつある。
2.主な農作業
1)施設外就労
とよた園芸場の施設野菜(パプリカ、ミニトマト)、露地野菜を中心に、西条柿、新規就農者の畜産等で取り組む。
また、近隣農家から始まった水田畦畔の草刈り作業は、年々委託面積が増え、受託地域も広範囲になってきた。
草刈り機を使いたい利用者には講習受講させ、草刈り機の正しい使い方などを確認しながら集草作業から草刈りに移行する。
【図2 バジルの収穫、ミニトマト誘引、草刈り】
2)施設内作業
事務所1階の作業場では、収穫した野菜類の出荷調整作業を行う。
チームごとにその日の目標を定め結果を評価しながら作業改善に取り組む。
【図3 収穫したバジル、唐辛子の選別】
【図4 コンバイン操作】
3)農業生産
耕作放棄田を活用したもち米栽培。栽培技術や機械操作は、農福連携サポーターからも指導を受ける。
【図5 トラクター操作もできる】
3.フルール益田の活動上の特徴と工夫
- 農作業は利用者の目標に向けたスキルアップの手段。
将来農業に就くことを目標としている利用者は少なく、各人が夢を持って進むよう話し合いながら目標達成に向けて農作業を通じて自己主張やリーダーシップの力を伸ばし資格取得も支援する。 - 作業はチームで行うことで上達する、そして経験を重ねることで力が伸びる。
その日の作業内容からチーム編成し、A型利用者がチームリーダーとして作業計画を立てチームで作業する。この過程で計画、実践、評価、報告、相談といった仕事の基本スキルを身につけるよう指導する。 - 携帯電話を使って作業の進捗状況等を画像データも使いながら職員に報告、相談する。現在専用アプリを開発中である。
- 作業や経営データの数値化に努めるとともに、経営研修には利用者も参加する。理解することよりも情報を共有すること、勉強の大切さに気づくことが目的である。
- いつも笑顔で大きな声であいさつ。相手も気持ちよく自分も気持ちよく仕事ができる基本姿勢を養う。
4.フルール益田の評価
- みんなが笑顔で楽しく作業しているから、初めて来た利用者も自然に笑顔が増えてきた。
- 若い世代の利用者が多く、切磋琢磨しながらそれぞれの目標に向かって進んでいる。目標達成した時は、みんなで喜び祝っている。
- 多種多様な農作業に従事し、農業機械の操作もできる人が増えてきた。畦畔や農地の草刈り作業は農家から喜ばれ委託も増えてき
た。作業はきついが、「ありがとう」の言葉に地域とのつながりを感じている。 - 利用者のうち3名がスタッフとしてフルール益田に就職。また、3年かかって畜産農家にも就職するなど、彼らの就労の道が拓きつつある。
<資料>
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